明日の人材ニーズとリカレント教育の必要性

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超高齢化社会が到来し、人生100年時代と言われるようになりました。60~65歳でリタイアしても、100歳まではAIなど革新的な技術向上により35~40年残っています。まだ働けるのに引退するのは早いという人も増えています。さらに、産業構造の激変により、「消滅する仕事」「競争力を失う仕事」なども現実味を帯び、学び直しは誰にでも身につけるべき身近なテーマになってきています。

1.新しい資格やスキルは将来のキャリア展開を考えてから取得する

新しい資格やスキルは将来のキャリア展開を考えてから取得する

社会人の学び直しと聞いて、まっ先に思い浮かべるのは「資格」や「スキル」の取得。

キャリアアップやキャリアチェンジを考えるのであれば、一度は考えると思います。
社会保険労務士、中小企業診断士、宅地建物取引士などの「資格」の多くは、社会人になってから学校に通って、もしくは通信教育や独学で勉強して取得することができます。
一方で現代は、それらの「資格」を取得しただけでは必ずしも独立開業できるわけではないし、昇給にもつながらない場合があります。ではどうすればいいか?

資格取得の前に、その資格を使って行う仕事のビジョンを考える必要があります。独立開業の場合も、社内で新しい活躍の場を獲得するのも同じこと。「ニーズ=市場はあるのか?」「自分の経験と取得した資格を結び付けて、他人との差別化はできるか?」「市場を開拓していくマーケティング力とアイデアはあるのか?」です。仕事とあまり関係のない資格を、特に明確な目的もないままに取得して、その後に、取得した資格を活かす方法も考えずに放置するのだとしたら、資格取得はキャリアに何の影響も与えないただの「肩書き」になってしまいます。

たとえば、今いる会社が「業績が悪化してリストラが始まった」とします。あるいは「このまま会社にいても出世の道がない」と感じているとしたら、考えるべきは会社の外に出ても生きていく方法です。
うまく「転職」できればいいのですが、年齢も高くそれも難しいとなれば、「独立」できる「資格」の取得を考えるでしょう。
ただし、ここで考えるべきは競争相手の存在です。例えば「税理士」。仕事はたくさんあったとしても、それを請け負う税理士や税理士法人の数も無数にあります。彼らは独自の得意先を持っていて、シェアを取るのは容易ではありません。
たとえば、とある税理士さんは、MBAを取得して節税に強い経営コンサルタントとしてアピールしました。このように「資格」を利用して、市場のニーズに応えられるような新しいサービスを企画開発できるなら、これほど強い武器はありません。
「資格」を取得するなら、とりあえず資格でも、ではなく、その資格を利用して○○してやるんだ、という強い意志をもって受験に取り組みましょう。
上記は一例です。実際にはもっともっとあなたの立場で往かせる資格やスキルがあります。

2.30-40代の学び直しとは?

30代で仕事にも慣れてきたのであれば、会社の外に興味を持つのは世界を広げる一つの手段です。またより良い転職は、経験と将来性のバランスが取れた30代前半までに考えるのが良いとされています。そのための方法として教育機関での学び直しを選択してみるのもよいでしょう。30代の資格取得は人生の路線変更や長期スパンでの自分。本当に自分の興味のあること、もしくは会社において必要とされていること、起業を前提にするのであれば市場性があることなどを選ばなければ、長続きせずにお金の無駄になります。30代の学び直し・資格取得は社会構造の変化、自分の5~10年後の将来、今後の人脈やマーケットづくりの想定をしながら行うことになります。

40代で、会社の中での自分の役割や仕事が大きくなってきたとき、あるいは「業界」「会社」「自分」の将来が見えてくれば、リストラ対象者になる不安も出てくるだろうと思われます。現実的・具体的に、今後のために何かを考えるべき時です。30代~40代の人の中には、いわゆる氷河期世代といわれる不況期に卒業し、正社員として就職できなかった人が多数います。将来も非正規のままだと、生活もむ不安で、国も各種正規への転換を論じています。
産業構造の変化や、今回のコロナ騒動のように、企業の業績は急激に悪化する場合があります。また経営方針の変化により、好業績の中でのリストラも起きています。40代の学び直しは、今ある自分の「資源」(人脈・スキル・経験・他の資格)を活用する形で行う必要があります。特に今いる業界自体や自分のスキルに今後の伸びしろを感じない場合、40代が軌道修正する最後のチャンスです。

3.シニア予備軍はセカンドキャリアの準備

50代になると、定年やリタイアが現実味を帯びてきます。ですが、現在のように60~65歳で定年を迎えると、100歳まで伸びる平均寿命の中、35~40年の時間が残ります。ましてや今、政府は70歳までの雇用を企業の努力義務としています。ところが、その間の年金での生活は収入面での不安が残ります。しかも実際には定年になる前に役職定年などがあり、収入が早くから減る場合もあります。しかし現代の60代は、体力も能力も有り余っている人が多いです。そこで50代では、セカンドキャリアの生き方、働き方を見越した学び直しをする必要があります。
中高年が持つのは長年の人生経験から得たノウハウと人脈ですが、一方で、失うものもあります。それは退職によってなくなってしまう肩書きと名刺です。この肩書きと名刺を新しく更新するのが、資格の取得です。
どんなに有名な会社の部長でも、退職したらただの人です。自己紹介で「私は元○○の部長です」と名乗ることほどむなしいものはありません。しかし「家電製品アドバイザーの資格を持っています」とか「インテリアコーディネーターの資格を持っています」と自己紹介できれば、そこから話が弾むかもしれません。何よりも、ただの定年退職者というよりも他人の印象に強く残ることができます。資格の取得は、定年退職者に新たな肩書きを与えてくれるものでもあるのです。

4.女性にとっては資格、スキル取得が大きな武器になる

2015年から女性活躍推進法が施行されました。現代ではさらにジェンダーに対する価値観が多様化し、女性にとっても働きやすい環境が広がってきていますが、法律の整備が現実社会を変えるまでにはタイムラグがあります。
特に平均年齢の高い、昭和を感じさせる中小企業の場合、どうしても経営陣の価値観が旧弊なままで「女性はアシスタント」「女性は結婚や出産があるから戦力にならない」「女性は残業できない」などと無意識に感じている人や、逆に「女性にこんな仕事をやらせるわけにはいかない」「女性は子育てを優先させなければ」と考えている人がまだ残っている感じがあります。そのような偏見にさらされがちな女性にとって武器となるのが「新しい学び直し」です。古くなったスキルを更新したり、あるいは資格という目に見える評価を身にまとうことで、自分の価値をアピールできます。実際に、子どもが小学校に上がって時間ができてから、仕事に関連して簡単に取得できる資格を取った女性は、会社からの評価が上がったとうれしそうに話してくれました。高齢者の場合と同じく、資格やスキルは肩書きとして無言のアピールになるからです。また身体にハンディキャップのある人や、LGBTに属するジェンダーを持つ人などは、逆にそれを専門性としてアピールできます。国も「女性リーダーは3割」の目標を掲げたがまだ実現しません。しかし、女性がリーダー的な位置になる企業が確実に増えています。